福岡市の字図が一般に公開されたようです。
こちらはオープンデータサイト:
字図(地番現況図) - データセット - 自治体オープンデータのCKAN
オープンデータの活用について興味がある身として、インパクトがあった情報だったので、取り上げてみました。
また、この字図地図をもう少し利用しやすくするコツを紹介したいと思います。
まず、「福岡市Webまっぷ」にアクセスします。
画面左下に「字図(地番現況図)」のアイコンがあるので、クリック。
「利用許諾」のページで一番下の「同意する」をクリック>「地域の魅力」をクリックします。表示したい位置まで、地図を移動します。縮尺は1/1000に設定します。
この画面で画面コピー(Printscreen)を行います。
次に画面左上の赤い「マップ切替」ボタンをクリックします。
「マップ選択」画面で、「字図(地番現況図)情報」をクリックします。
”全く同じ場所” の字図(地番現況図)情報が表示されます。
ここでも、(地図を動かすこと無く)画面コピー(Printscreen)を行います。
以上2つの操作で取得した画像を重ねて片方の画像を透過処理します。 その結果が下の画像です。
字図と地形図の比較画像です。 建物がどの地番の土地の上に建っているか、ひと目で判る地図の完成です。(この比較によれば、ビルなど地上施設は、1つの土地(筆)の上に建っているわけでは無く、複数の土地の上に跨って建っていることなどが判ります。天神コアやビブレなどは狭い土地が集まって使用されていることが判ります。)
今回、画像の透過に使用したのはgimpです。gimpの操作方法はこちらを参考にさせていただきました。
GIMP – レイヤーの透明度を変更して半透明に透過する方法 | Howpon[ハウポン]
その他、地図の精度などについては、地図自体が持つの精度に依存すると思いますので、そのあたりは注意が必要と思われます。
ここからは、私の個人的考察など。
今回、字図が公開されたことによって、色々なことが便利になると思いました。思いつくメリットは以下の通り。
字図のインターネット公開のメリット
①土地取引の活性化
②所有者不明の土地や空き家問題解決の促進
③公共資産の有効活用
メリット① 土地取引の活性化
個人でも、知りたい場所の土地の地番、範囲がが判ることで土地取引に対するハードルが下がり、取引の活性化が期待できます。
土地の識別情報である”所在と地番”判明すれば、素人(無資格者)でも、インターネット上(もしくは最寄りの法務局に申請すること)で、土地の所有者情報を入手することが出来ます。※ただし、土地の厳密な境界(筆界)の形状は、今回福岡市が公開した、「字図」とは異なる場合があります! 取り扱いには十分な注意が必要です。
メリット② 所有者不明の土地や空き家問題解決の促進
昨今問題化が著しい、所有者不明の土地や空き家問題解決の促進が考えられます。隣の空き地や空き家の情報が入手しやすくなります。(個人情報保護等問題が懸念する人もいると思いますが、事実、現在法務局では、土地地番等を記載して申請することで”誰でも”土地の登記(所有者)情報が入手で出来ます。)
メリット③ 公共資産の有効活用
福岡市が公開した”字図(地番現況図)”情報ですが、整備にはもちろん税金が使用されています。これは、福岡市市民、その他の国民の税金を使用して作成した資産ということです。これらの資産の有効活用という点では、賛成です。ただし、以下のような懸念もあります。
①整備範囲が限定的
②土地境界、土地取引のトラブルの発生
③個人情報の懸念
懸念①整備範囲が限定的
福岡市では、地籍調査(土地の境界(筆界)の特定)事業が21%しか完了していません。土地区画整理事業など、地籍調査に近い精度での土地境界の整備完了地域、国有地、公有地を合わせても5割程度のようです。(下画像参照:国土交通省地籍調査Webサイト地籍調査状況マップから引用)
この程度?の整備状況で公開するのは、とても勇気のいる判断だっと思います。しかし、市全域の整備を待つと何年後になるかわかりません。
下手をすると法律や社会制度(財産所有の概念など)が変わって、土地境界自体意味のないものになるような時代になってしまいます。100年後とか。それとも永遠に終わらない。
それよりも、土地情報の一般化を進め、土地取引の活性化によって、土地境界情報の重要性を一般の人に認識してもらい、資本を集める方法へ考え方が変化したのかもしれません。 この福岡市の意思を汲んで、どんどん活用してほしいものです。
デメリット② 土地境界、土地取引のトラブルの発生
ただし、ここで大きな懸念があります。
インターネットで見ることが出来る「字図」境界をもとに土地取引が行われることです。
「字図」とは土地の位置とかたち、地番がわかるものです。(不動産登記法第14条第5項の地図に準ずる図面 より)よって、”面積”を正確に表すものではありません。
また、字図上の”位置”というものも、地図(地球)上の”ココ”といった絶対的な位置ではなく、”ある土地の北側に位置する”などの、”相対的”位置のことで、実際、現実世界の”この位置”に土地があるかどうかは、「土地家屋調査士」と呼ばれる有資格者の判断が必要です。
1筆まるごとの売買で、「土地家屋調査士」に調査を依頼してみたら、実際はインナーネット上の範囲よりも狭かった。ということもあるかもしれません。
しかし、今回のインターネット公開は、これまでの手法に比べ大きな進歩だと思います。(これまでは、区役所の窓口にわざわざ出向いて、何百円かを支払って、紙で図面を手に入れていたのですから。)
デメリット③ 個人情報の懸念
今回インターネット公開されたのは、字図(土地の位置、かたち、地番)です。
だれがその土地の所有者かまではわかりませんでした。
しかし、法務局に行って、数百円の手数料を支払えば、その情報は判明します。
もしくは、インターネットを使っても可能です。
ある場所の土地所有者を特定することのハードルが下がることによる、犯罪等へ利用されることへの懸念はあると思います。しかし、これまでの不動産登記法でも、不動産の所有者を含む登記情報は、全ての人が見れる制度となっています。 今後も一般公開化は進んで行くと思われます。個人的には、どんどん公開が進んでほしいです。
2024年3月追記:
2023年1月、法務局にある登記所備付地図(地籍調査済みの14条地図データと思われる)が公開されました。
法務省 地図データのG空間情報センターを介した一般公開について地図データのG空間情報センターを介した一般公開について
これにより、道路地図で有名なマップルでも、地図や航空写真との表示が可能になっています。